湘南では、9月の中ごろには海の家の片付けがすっかり済み、お彼岸の今はいよいよ秋の気配をそこかしこに感じる時期になっています。
波チェックに出ると、海の色は夏よりもクリアーなマリンブルーやエメラルドブルーになり、透明度が増して水は澄み渡り、まだ日差しは強いながら、吹く風は湿気を含まずサラッとしていて、とても気持ちの良い季節です。
海辺のちょっとした藪に生えるススキの穂は少しずつ白金に色づき、脇に点々と寄り添う彼岸花は鮮やかな赤色で風に揺れています。
波のない平日の午後の波チェックなどは、小ぶりなショアブレイクの音と、虫たちの声だけが、広々としたビーチに静かに響き渡り、西に傾いた陽射しの濃いオレンジ色が、すべての物をメローに染め始めて何とも言えない雰囲気です。
一方ではこの夏、西日本を中心に各地で猛威を振るった豪雨の被害があり、とても秋の訪れを感じるどころではない人が今もたくさん居られると思います。
海・自然は折々にいろいろな表情を見せます。台風の接近・通過などで荒れた天候の波チェックの時には、無情に叩きつける大粒の雨や、バイクごと飛ばされそうな突風を恨むことも多々あるのですが、そうした苦しさも、四季折々の美しい景色に触れるといつしか忘れ去り、少しずつ愛着と畏敬の念が、知らず知らずのうちに上塗りされているようです。
仏教では、お彼岸は生死の海を渡って到達する悟りの世界を表すそうです。
自分には悟りも何もなく、日々煩悩のおもむくままにあたふたと生きていますが、この時期は毎年、何故だかとても気持ちが落ち着いてくる感じがします。
波情報の仕事をしていると、自然の四季折々の変化を細かく観察して敏感に感じ取り、その中で知らず知らずのうちにいろいろな感情を持ち、それを皆さまにお伝えする情報の中に織り込んで伝える中で、自分のバランスがうまく保たれていることがあるような気がします。
この仕事を続けるにつけてつくづく感じる、他ではそうそう得難い「波情報」という仕事の素晴らしい部分だと、自分では強く思っています。